【新装版】BAD BOYS
第7章 次に夢を見るその時は
・thirty-one
・
「はなびちゃん。
……わたしね、御陵組の、娘なの」
染が、怪我をしたのだと。
珠紀から連絡があったその夜、トウカさんがわたしだけに伝えたそれに驚かなかったのは、なんとなくそんな気がしていたからかもしれない。
ルームを作った張本人。
そして誰からも好かれ、頼られる彼女の存在感は、わたしのような一般人とは違うように見えた。
御陵組。
全国屈指の、極道一家。
「御陵 燐音。
それがわたしの本名で、この間和璃さんの美容室で会った時に連れてた子は……莉望は、はなびちゃんに聞かれた通り、正真正銘わたしの娘よ」
「、」
ナンバーワンキャバ嬢だと、話では聞いてる。
……この人は、どれだけの闇を、ひとりで見てきたんだろう。
「子どもがいることは、家の関係者しか知らない。
だからルームの子たちは、わたしが母親だって知らない」
ルームが存在する意味は、前に紫月から聞いた。
それを作ろうと思った彼女は、わたしじゃ計り知れないような苦しみを味わっていて。
「……ねえ、はなびちゃん」
「はい」
「わたしのせいで、ルームが狙われてる。
実際、手をつけにくいルームよりも先に、染が狙われたのがその事実だと思う」
「トウカ、さん」
「正直、もうルームを守るのが限界なのよ。
……これ以上わたしが関わると、また『花舞ゆ』も狙われることになりかねない」