【新装版】BAD BOYS
ちょっと貸して、と。
すみれちゃんの画像を見る時に貸してもらってからずっとわたしの手の中にあった自分のスマホを、椿が取る。
それから文字をあっという間に打ち込んで、彼に送信したらしい。
まじで邪魔だった、と切実な声を聞いて、つい笑ってしまった。『花舞ゆ』メンバーも大概だけど、椿の友だちも個性が強い。
「彼も同じ学校って言ってたわよね?
……あの髪も絶対校則違反でしょ」
「俺と同じ校則違反常習犯だよ」
「……あと、女の子に対して軽いでしょ?」
「女だけじゃねえよ、あいつまじで軽いんだよ。
つーか年齢詐称してホストなの既にやべえだろ」
彼への愚痴が溜まってるみたいだ。
髪留め選びを再開しながらうんうんと話を聞いてあげていたら、椿の彼に対する愚痴は長々と続き。
「……ごめんはなび、俺ちょっと愚痴りすぎた」
「ふふ。随分と文句が溜まってるようで」
「まじでごめん」
文句と言っても本気の文句じゃないから、仲良しだってことはわかる。
仲良いの?と途中で聞いたら、いつも学校では彼と過ごすことが多いらしい。そりゃあ先生も注意するのを諦めるわけだ。
コバルトブルーの髪に瞳。そして女の子に対する態度がやたらと甘い椿。
紫の髪に、年齢詐称をしてホストをやっている上、やっぱり軽い彼。……うん、わたしでもあきらめると思う。
「とりあえず、
すみれちゃんの髪留めはこれでどう?」
彼が文句を吐き出している間に、数を絞った。
最終的に選びきれなくて、てのひらにのっているのはふたつ。片方はピンク色のお花で、もうひとつは黒の音符だ。どっちも可愛い。