【新装版】BAD BOYS



……そんな心配してくれなくても、子どもじゃないのに。

自分でどうとでも出来る年齢なのに、心配してもらえるのはうれしい。



「折りたたみ傘持ってるから平気よ。ありがとう」



『そっかそっか、なら良かった。

……急だけど、今日も仕事終わりに行っていい?』



「え、来てくれるの?」



『明日も仕事だけど、それまで一緒にいられるから。

はなびと過ごしたいと思ったんだけど』



「うん、わかった。待ってる」



そんなふうに言われて、うれしくないわけがない。

見えるわけでもないのにこくこく頷くと、ノアは仕事の時間になったのか『じゃあまた後でね』と電話を切った。




昨日も来てくれたのに、今日も来てくれるなんて。

ついついご機嫌で椿を振り返れば、彼は「送るよ」と静かに告げた。



「大丈夫なのに」



「デートだから、俺が送りたいの」



そう言われてしまえば、文句も言えない。

それに今のわたしはご機嫌だから、椿に何か言われたところで損ねることもない。素直に甘えようと、バッグの中から折りたたみ傘を取り出した。



「最近雨多いな」



「梅雨だからでしょう?

わたしは雨の日好きよ。濡れるのは嫌だけど」



折りたたみ傘もわたしに持たせず差してくれて、とことんエスコートが上手だなと思う。

濡れてしまわないようにと詰められた距離に、とくんと鼓動が揺れる。



< 61 / 463 >

この作品をシェア

pagetop