【新装版】BAD BOYS
……そんな心配してくれなくても、子どもじゃないのに。
自分でどうとでも出来る年齢なのに、心配してもらえるのはうれしい。
「折りたたみ傘持ってるから平気よ。ありがとう」
『そっかそっか、なら良かった。
……急だけど、今日も仕事終わりに行っていい?』
「え、来てくれるの?」
『明日も仕事だけど、それまで一緒にいられるから。
はなびと過ごしたいと思ったんだけど』
「うん、わかった。待ってる」
そんなふうに言われて、うれしくないわけがない。
見えるわけでもないのにこくこく頷くと、ノアは仕事の時間になったのか『じゃあまた後でね』と電話を切った。
昨日も来てくれたのに、今日も来てくれるなんて。
ついついご機嫌で椿を振り返れば、彼は「送るよ」と静かに告げた。
「大丈夫なのに」
「デートだから、俺が送りたいの」
そう言われてしまえば、文句も言えない。
それに今のわたしはご機嫌だから、椿に何か言われたところで損ねることもない。素直に甘えようと、バッグの中から折りたたみ傘を取り出した。
「最近雨多いな」
「梅雨だからでしょう?
わたしは雨の日好きよ。濡れるのは嫌だけど」
折りたたみ傘もわたしに持たせず差してくれて、とことんエスコートが上手だなと思う。
濡れてしまわないようにと詰められた距離に、とくんと鼓動が揺れる。