【新装版】BAD BOYS



誰が悪いわけじゃないことも知ってる。

そうやって足掻くことでしか、みんながみんな生きていけないこと、ちゃんとわかってる。「幸せ」を願う余裕もないこと、わかってるから。



だからわがままは言わない。

ノアに、わたしを好きでいて、なんて贅沢なことも強請ったりしない。──あの場所にもどりたい、なんてそんなこと、絶対に言わない。



「ノアは、ひとりじゃ生きていけないの」



「……そんなに好き?」



「……好き」



もしわたしが、何もかも知らない子どものままだったら。

彼の手を、ふり解けたはずだ。──先のない恋なんて、したくないのだと。



でもわたしは、もう子どもじゃないから。

彼がいつでも弱さを見せられる場所を、わたしがつくってあげなきゃいけない。




「……ねえ、椿」



「………」



「ノアが、わたしのことを「いらない」って言う瞬間まで。

……あなたがどう頑張ろうと、わたしはあの場所にはもどれない」



できることなら、ずっと。

『花舞ゆ』のみんなの笑顔を、そばで見ていたかった。



何の疑いもなくわたしが「仲間」だと言えるのは、彼等だけだ。

2年間。……『花舞ゆ』を思わなかった日なんて、本当は、一度もない。



「ごめんね」



それでも、お願いだから。

わたしを連れ戻そうなんて責任感、ひとりで背負おうとしないで。……わたしから、手を離して。



< 63 / 463 >

この作品をシェア

pagetop