【新装版】BAD BOYS
「昨日、はなびに連絡ついた?」
「……いや。
故意的に避けてるんだと思いますけど」
「はなびも用心深いからね」
ふっと息をついたノア先輩は。
「椿。染」と、それぞれ俺らを呼ぶ。だけど呼んだ後に何も言わないから。結局、そう遠くない俺の家まで無言、という状況が続いた。
「……ありがとうございました。
わざわざ、車で送ってもらって」
「ううん。
……さっき、言おうとしたことだけど」
ぐっと、身体に力が入る。
いい話だなんて、はじめから思ってない。だから、変な空気なんてつくらないで、さっさと言ってくれればいいのに。
「ごめん」
「………」
「俺じゃ絶対、はなびを幸せにはしてやれない。
……だけど、手放す気、ないんだ」
ドアノブにかけた手が、汗を浮かべる。
はなびを幸せにしてやれないなら、もう、解放してやってほしい。でもおそらくはなびは、端から幸せになる気なんてない。
だってもう既に、しあわせだと思ってる。
「だから、ごめん。
……染と椿には悪いけど、はやく、あきらめて」
「──ひとつだけ、聞いてもいいですか」