【新装版】BAD BOYS



あきらめたくはない。

だけどこれを知ることができるなら。はなびのあの日の選択が正しかったことを証明できるなら。……そのときは、もう。



「どうして、2年前。

はなびに、俺らと関わるなって言ったんですか」



『花舞ゆ』がはなびにとって大切だったこと。

この人は知ってたはずだ。ノア先輩自体はメンバーじゃなかったけど、彼のまわりにも『花舞ゆ』に入っている人は多かったから。



はなびが姫のように扱われていたことを、この人は知ってた。

だけど、あえて、俺らと離れるように言ったその真意。──それだけが、どうしても。



「……本当は。

はなびのこと、ふるつもりだったんだ」



「……え」



ミラー越しに、彼と目が合う。

深い声でそう口にした先輩に、喉が渇く。たった一言でその真相を探ろうとするけれど。できるわけもなくて続きの言葉を待った。




「好きじゃなかった、わけじゃないし。いい感じに、ぐらっときてて。何もないなら、間違いなく俺はあの告白を呑んでた。

だけど、俺のまわりで起こってた事情に、はなびを巻き込みたくなかった」



だから本当はふるつもりだったんだ、って。

静かに告げた彼は、まるで懐かしむようにまぶたを伏せた。



「……はなびにとって、『花舞ゆ』がどれだけ大事なのかは知ってたよ。

だからあえて、天秤にかけた。──そうすれば、はなびが取るのはぜったいに『花舞ゆ』だって、信じて疑わなかったから」



「、」



「……まさか、俺をえらぶとは思わなかったよ」



ばかだよねえ、って。

はなびに向けられたその言葉は、彼が自分に向けたようにも聞こえる。その真相は、わからないけれど。



「……付き合って、はなびはもう、俺のまわりのことぜんぶ知ってて。

それでもそばにいるって言ってくれるんだよ。……いまも、本当はもどりたいはずなのに」



< 81 / 463 >

この作品をシェア

pagetop