【新装版】BAD BOYS
あきらめたくはない。
だけどこれを知ることができるなら。はなびのあの日の選択が正しかったことを証明できるなら。……そのときは、もう。
「どうして、2年前。
はなびに、俺らと関わるなって言ったんですか」
『花舞ゆ』がはなびにとって大切だったこと。
この人は知ってたはずだ。ノア先輩自体はメンバーじゃなかったけど、彼のまわりにも『花舞ゆ』に入っている人は多かったから。
はなびが姫のように扱われていたことを、この人は知ってた。
だけど、あえて、俺らと離れるように言ったその真意。──それだけが、どうしても。
「……本当は。
はなびのこと、ふるつもりだったんだ」
「……え」
ミラー越しに、彼と目が合う。
深い声でそう口にした先輩に、喉が渇く。たった一言でその真相を探ろうとするけれど。できるわけもなくて続きの言葉を待った。
「好きじゃなかった、わけじゃないし。いい感じに、ぐらっときてて。何もないなら、間違いなく俺はあの告白を呑んでた。
だけど、俺のまわりで起こってた事情に、はなびを巻き込みたくなかった」
だから本当はふるつもりだったんだ、って。
静かに告げた彼は、まるで懐かしむようにまぶたを伏せた。
「……はなびにとって、『花舞ゆ』がどれだけ大事なのかは知ってたよ。
だからあえて、天秤にかけた。──そうすれば、はなびが取るのはぜったいに『花舞ゆ』だって、信じて疑わなかったから」
「、」
「……まさか、俺をえらぶとは思わなかったよ」
ばかだよねえ、って。
はなびに向けられたその言葉は、彼が自分に向けたようにも聞こえる。その真相は、わからないけれど。
「……付き合って、はなびはもう、俺のまわりのことぜんぶ知ってて。
それでもそばにいるって言ってくれるんだよ。……いまも、本当はもどりたいはずなのに」