【新装版】BAD BOYS
第2章 夢の内容など束の間の記憶
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──メッセージ履歴から、知らぬ間に椿の名前が消えていた。
それに気づいたのは染からの電話に出たあとで、不思議に思ってメールしようかとも考えたけど、関わる必要はないのだと気づいてやめた。
染は「元気か?」って、わたしに尋ねてきて。
当たり障りのない会話をしたあと、「また電話する」と言って通話を終わらせた。
『花舞ゆ』のことも、ノアのことも。
わたしがどこにいるのかも、彼はまったく話題に触れなかった。染に番号を教えたのはノアだったと、それだけは言ってたけど。
「彼氏と喧嘩?」
「え?」
「……ちがった?」
ぼんやりしてたから、と。
杏子に言われて、ふるふると首を横に振る。ド派手なツインテールの彼女は現在先生に呼び出しを食らっているから、めずらしく静かな昼休みだ。
「彼氏じゃないなら、『花舞ゆ』の人たち?」
……杏子が深く聞いてくるなんて、めずらしい。
わたしがもともとみんなと親しい関係にあったことを、椿とデートした後の月曜日、ふたりには話した。
うっかり口をすべらせて椿とデートしたことが桃にバレたのがきっかけだけど、ふたりとも、真剣に聞いてくれて。
わたしと『花舞ゆ』の関係を、まわりには黙っておいてくれるらしい。
「……そんな感じ、かな」
「……はなびは、たまに不器用ね」
ぽつっと。
つぶやいた杏子の綺麗な黒髪が、さらりと揺れる。これでもしっかりしているつもりなのに頭を撫でられて、なんだか不思議な気分だった。
「もどりたいんでしょう?本当は」