魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
1.魔力が枯渇しました
「あ」
力が失われたのを感じた。両手に念じても何も出てこない。魔力がたまる感じもしない。
魔力枯渇。
それが、レインの頭に浮かんだ言葉だった。
「おい、レイン。何をぼやっとしている」
横から声が飛んできた。その声の主は上司であるトラヴィス。
「あの、トラヴィス様」
恐る恐る彼の名を呼ぶ。
「どうかしたのか」
「あの。魔力が無くなりました」
トラヴィスは右手で炎の魔法を魔物たちにぶつけ、左手の防御魔法でレインを覆った。そして、右手で魔法を放ちながらも、横歩きでレインに近づいてくる。
「それは、本当か」
それでも彼女を守る防御魔法は保たれたまま。
「はい。魔法が、もう、使えません」
レインが深く息を吐きながら、そう言った。
ちっ。
トラヴィスは盛大に舌打ちをした。「なんてことだ」という彼の声が聞こえたような気がした。気がしただけで、彼はそのようなことを口にするような男ではない。少なくとも、レインに向けては。
だけど彼女は身を縮めるしかなかった。
力が失われたのを感じた。両手に念じても何も出てこない。魔力がたまる感じもしない。
魔力枯渇。
それが、レインの頭に浮かんだ言葉だった。
「おい、レイン。何をぼやっとしている」
横から声が飛んできた。その声の主は上司であるトラヴィス。
「あの、トラヴィス様」
恐る恐る彼の名を呼ぶ。
「どうかしたのか」
「あの。魔力が無くなりました」
トラヴィスは右手で炎の魔法を魔物たちにぶつけ、左手の防御魔法でレインを覆った。そして、右手で魔法を放ちながらも、横歩きでレインに近づいてくる。
「それは、本当か」
それでも彼女を守る防御魔法は保たれたまま。
「はい。魔法が、もう、使えません」
レインが深く息を吐きながら、そう言った。
ちっ。
トラヴィスは盛大に舌打ちをした。「なんてことだ」という彼の声が聞こえたような気がした。気がしただけで、彼はそのようなことを口にするような男ではない。少なくとも、レインに向けては。
だけど彼女は身を縮めるしかなかった。
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