魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
彼女が気にしていたことなど、トラヴィスは知らない。この婚約を望んでいるのかいないのかさえも知らない。彼女は、そう言ったことを口にはしない。
ライトの妹がトラヴィスと婚約したのは十二歳のときだ。まして相手はすでに魔導士団の一員として立派に魔物討伐に参加している、見目もそこそこいい将来有望な魔導士。そんな彼が婚約したのが、たった十二歳の子供となれば、その子供の兄であるライトは恰好の餌食となる。トラヴィスの同級生であり、レインの兄という立場。なぜあの二人が婚約したのかという質問責めにどれだけあったことか。
だが、レインの魔力について知っている者は、それらが魔導士団長の思惑によるものだろうとも思っていた。それは、トラヴィスでさえも惹かれたレインの魔力。
彼女の魔力――。
それは、無限大である、ということ。魔力が無限大。つまり、回復薬いらず。
いくら魔法をぶっ放してもいい。好きなだけぶっ放していい。それが魔力無限大の魅力。力の加減もする必要はない。好きなときに好きなだけ。
魔力無限大の娘だからトラヴィスが目をつけた、という噂も立った。それは噂ではなく事実なのかもしれない。彼女の魔力にも惚れたトラヴィスだから。
それでもレインは、なぜ自分のような子供にトラヴィスのような立派な魔導士が求婚するのかさっぱりわからなかった。わからないまま五年が過ぎた。
「トラヴィス。悪いことは言わない。レインのことを想うなら、なおさらだ。レインとの婚約を解消してもらいたい」
ライトはさらにずずっと身を乗り出した。
「レインと話をさせてくれ。それに、一時的に魔力はゼロだったが、回復薬を飲んだら二だけ回復した」
「それもレインから聞いた。だが、あれから十日程経った今でも、妹の魔力は二のままだ」
「なんだって。それだけ経っても、二から回復しないというのか」
トラヴィスは浮かした腰を戻して、椅子に深く座り直した。腕を組んだ。
ライトは、机の上に乗り出した上半身を元に戻した。
「レインのことは、魔法研究所で引き取りたい。魔導士団も退団とさせてくれ」
そこでライトは「頼む」と頭を下げた。
ライトの妹がトラヴィスと婚約したのは十二歳のときだ。まして相手はすでに魔導士団の一員として立派に魔物討伐に参加している、見目もそこそこいい将来有望な魔導士。そんな彼が婚約したのが、たった十二歳の子供となれば、その子供の兄であるライトは恰好の餌食となる。トラヴィスの同級生であり、レインの兄という立場。なぜあの二人が婚約したのかという質問責めにどれだけあったことか。
だが、レインの魔力について知っている者は、それらが魔導士団長の思惑によるものだろうとも思っていた。それは、トラヴィスでさえも惹かれたレインの魔力。
彼女の魔力――。
それは、無限大である、ということ。魔力が無限大。つまり、回復薬いらず。
いくら魔法をぶっ放してもいい。好きなだけぶっ放していい。それが魔力無限大の魅力。力の加減もする必要はない。好きなときに好きなだけ。
魔力無限大の娘だからトラヴィスが目をつけた、という噂も立った。それは噂ではなく事実なのかもしれない。彼女の魔力にも惚れたトラヴィスだから。
それでもレインは、なぜ自分のような子供にトラヴィスのような立派な魔導士が求婚するのかさっぱりわからなかった。わからないまま五年が過ぎた。
「トラヴィス。悪いことは言わない。レインのことを想うなら、なおさらだ。レインとの婚約を解消してもらいたい」
ライトはさらにずずっと身を乗り出した。
「レインと話をさせてくれ。それに、一時的に魔力はゼロだったが、回復薬を飲んだら二だけ回復した」
「それもレインから聞いた。だが、あれから十日程経った今でも、妹の魔力は二のままだ」
「なんだって。それだけ経っても、二から回復しないというのか」
トラヴィスは浮かした腰を戻して、椅子に深く座り直した。腕を組んだ。
ライトは、机の上に乗り出した上半身を元に戻した。
「レインのことは、魔法研究所で引き取りたい。魔導士団も退団とさせてくれ」
そこでライトは「頼む」と頭を下げた。