魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「まさかお前。レインのこと、脅していないよな。結婚しないと死ぬって」

「そんなことは言っていない。むしろ、私にかぎった話でもないことを伝えた」

「なっ、伝えたのか」

「ああ」

 ライトは、はぁと大きく息を吐く。

「お前の真面目さも、そこまでくると呆れるな。まあ、それがお前のいいところでもあるが。レイン、怒らなかったか?」

「めちゃくちゃ怒られた」

 ライトは苦笑するしかなかった。
 レイン自身も、自分の気持ちに自信はないが、恐らく昔から、トラヴィスのことを気にはしていた。もしかしたら、兄の友達の一人という気に仕方だったのかもしれないし、ほだされていたのかもしれない。
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