魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
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「えっと。マレリア。これを着るの?」

「はい。お嬢様。今日は初夜でございますので、どうぞこれでトラヴィス様を誘惑なさってください」

「誘惑って」
 マレリアから渡されたのは、胸の下から広がっているデザインのすっけすけの下着。いわゆる、ベビードールと呼ばれるやつだ。

「そのためにも、先ほど綺麗に磨き上げましたので」

 マレリアは優秀だ。その、侍女として。そして彼女に言われるがまま、それを着てしまう素直なレイン。

「お嬢様、頑張ってください」
 マレリアはレインにガウンを羽織らせた。

「何を」

「何をって、初夜に頑張るのは一つしかありません」

 そこまでマレリアに言われてしまうと、ぐうの音も出ない。

「お嬢様。私はですね。お嬢様とトラヴィス様の結婚を反対していた者の一人なのです」

「そうなの?」

「はい。旦那様にも申し上げておりました」

「どうして?」

 レインとしてはこの優秀な侍女が自分の結婚に反対していた理由が気になる。

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