魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
 ドニエルの心当たりがある優秀な人材。一人しか思い浮かばない。ということで、その人物の関係者の元を訪れた。

「ああ、なんだ。ドニエル、お前か」

「ライトさん。お忙しいところ、すいません」

「いや。お前たちほど、忙しくはない。それで、何か用か?」
 ライトは立ち上がると、お茶を淹れ始める。この魔導士団の副団長を見ていると不憫で仕方ない。

「はあ、魔導士団のことで相談があるのですが」
 温かく湯気の立つカップをドニエルの前に置いたライトは、もう一つを手にしたまま彼の向かい側に座った。

「ああ、なんか最近。すこぶる忙しそうだな」

「そうなんです。そういうわけで、団長からは優秀な人材をさらってこい、とまで言われました」

「さらう、って」
 そこでライトはカップにふーと息を吹きかけてから、それを飲んだ。

「ということで。レインさんをさらってもよろしいでしょうか」

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