魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「とりあえず。レインと引き離すためには、トラヴィスを遠征にやるのが一番いいな」

「行ってくれますかね? だだでさえ、結婚の休暇が短縮されて、めちゃくちゃ怒っているのに」

「行ってくれるように根回しするしかないだろ?」

「できますか?」

「むしろ、そのためにお前がここへ来たんだろ?」

 なぜかドニエルにはニヤリと笑うライトが不敵に見える。

「なあ、ドニエル。魔導士団にはあの三姉妹がいただろ」
 ライトが言う三姉妹。名前は確か。
「ああ、アイマイミーですね」
 長女がアイラ、二女がマイナ、三女がミイク。語呂がいいため、三姉妹は、まとめてアイマイミーと呼ばれている。
 三女が今年魔導士団へ入団したはず。となれば、レインとは同期入団になる。

「彼女たちも、レインさんのことは気にしていますよ。特にアイラは、やはり三姉妹の長女ということだけあって、面倒見もいいですからね」

「トラヴィスは遠征にやれ。三姉妹は、こちらへ残せ。その隙にレインを魔導士団へ復帰させてやるから。それからとりあえず、今日はトラヴィスを家に帰すな」

「それは……。今すぐにでも帰りたそうなのに、難しいと思いますが。仕事だけはたくさんあるので、それでなんとかしてみます」

「頼んだ」
 そこでライトはお茶を飲み干した。その頭の中はぐるぐるといろんな思いが漂っていた。

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