魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「あの、もしかして。その、私が入団してから、その、ずっとトラヴィス様のお側にいるしかなかった状況というのは……」

「そんなの、団長の仕業に決まっているでしょ」
 と、またまたマイナ。

「レインさん。ここだけの話にはなりません。もう、皆さんが知っていることなので言いますが。団長はものすごく独占欲が強いのです」
 真面目な顔をしてそんなことを言うアイラの目が怖い。

「私。レインさんと同期入団だから、ちょっと声をかけようかと思ったとき、すかさず団長が来て、レインさんを連れ去っていったんですよね。それで、なかなかお話する機会がなくて」

「え、あ。その。ごめんなさい」
 なぜかレインが謝罪する。

「レインさんは悪くないですよ」
 両手を顔の前で振るミイク。

「そうそう。全ては団長が悪いんだから。ほんと、顔だけはいいくせに、変態よね」
 
「そうね、顔だけはいいわね」
 アイラが同意する。
 顔だけはいい、という表現にレインはいささか不安を覚える。
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