魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
 王都の周囲には、いくつかの集落が点在している。そういった集落が魔物に襲われるということは、珍しい話でもない。ただ集落側も、魔物対策として自警団を設立したり、あとは王都から騎士団や魔導士団の派遣を要請したりしている。
 たまたまタイミングが良かったのか悪かったのか。

「あいつ。子供をかばったんだよ。魔法を使うよりも先に、身体が動いたんだろうな」

 その一言で察した。

「あいつ。お前のことに関しては変態だけど、根はそういう奴なんだよ」

 飲み終わったカップをクシャッと潰すと、ライトはそれをゴミ箱に投げ入れた。

「今日はトラヴィスについていてやれ。部位欠損者だ。欠損後の副反応として、今日は熱が出るはずだから。それくらい、してやれよ」

 それくらいが何を指すのか、わからないレインでもない。

「お兄様」

「なんだ?」

「どうやったら、この世界から魔物はいなくなるのでしょうか」

「それは、難しい質問だな。だったら、なぜこの世界に魔物がいるのか、ということも同時に考えなければならないだろうな」

 ライトのその言葉が、レインの心に引っ掛かりを与えた。

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