魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
27.善は急げ
「団長。レインさんの独り占めはダメだって、あれほど言いましたよね」
 ノックをして執務室に入ってきたのはマイナだ。

「今から、レインさんは研究所の方との合同会議の時間ですので、お借りします」

 トラヴィスは書類に落としていた視線をジロリとあげ、マイナを睨む。

「そのようなお顔をされてもダメです。私たちは、レインさんのスケジュール管理とサポートを任されておりますので」
 マイナは両手を腰に当てて、胸を張って堂々と言った。

「私は任せた覚えはないが?」
 冷えた視線。

「ライトさんから頼まれているのですよ。決まってるじゃないですか」
 その視線にもめげないマイナ。そしてレインは彼女に腕を掴まれ、連れ去られていく。

「トラヴィス様。私が戻ってくるまでに、そちらの書類を終わらせておいてください」
 愛しき妻はその言葉だけを残した。
 パタンと扉は閉められた。
 トラヴィスはため息しか出てこない。

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