魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「冗談だ。レインのことだ」

「やっぱりな」
 ある程度、予想はしていたのだろう。だから、彼女がいないこの時間を狙ってわざと来たのだ。トラヴィスが一人になる時間を。

「レインの魔力は?」
 それだけでライトが聞きたいことを悟ったのだろう。

「まだ、不安定だ」
 とだけ答える。

「その、回復方法は。やっぱり、それしかないのか?」

「今のところは」
 意味ありげに笑みを浮かべるトラヴィスに、ライトは頭をクシャリとかいた。

「お前さ。少しは加減しろよ」

「加減もしてるし、我慢もしてる」

「どこがだ」

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