魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「私、これでは魔導士団の方には戻れないですよね」
寂しそうに目を細める。
「トラヴィスは、それについて何か言ったのか?」
「魔力が無くてもいいって。トラヴィス様のお仕事の手伝いをすればいい、とおっしゃってくださいました」ですが、と言葉を続ける。
「魔力の無い私が、トラヴィス様の側にいるのはふさわしくないと思っております」
トラヴィスが手元にレインを置いておきたいという気持ちは本当だろう。なぜか彼は、十二も年の離れている妹を好いている。そのための婚約だ。てっきりその魔力に興味があるのかと思ったら、どうやらそうでも無いらしい。
だが、レインがこうなってしまった以上、二人の結婚は認めない方がいいと思っている。相手があのトラヴィスだから。
そう思ってトラヴィスに頼んでみたが、彼は婚約破棄をしないと言い張っていた。
レインとトラヴィスの婚約には、ライトの父親の契約魔法がかけてある。本来であれば、契約魔法をかけた父親が認めれば破棄できたはず。だが、その父がすでにいない。となると、本人たちの意思が優先されるわけだが、その本人が拒んでいるのではどうしようもない。
「あの、お兄様」
「なんだ?」
魔力鑑定をしたままだから、レインの手はライトに握られたまま。その彼女の手に力が入ったことをライトは感じた。
「私、魔導士団を辞めます」
「そうか」
彼女の告白を冷静に受け止めることができる自分がいた。不思議なくらいに。
「できれば、トラヴィス様との婚約も」
続きを聞かなくてもわかる。婚約を解消したい、ということだ。
「わかった。トラヴィスは明日から遠征に出る。戻ってきたら、俺から話しておこう」
「トラヴィス様はいつ頃お戻りになる予定ですか?」
「ああ。北の森の方と言っていたから、十日程ではないか?」
それを聞いて、レインは少し考え込む。
「その間に、私はここを出ようと思っています」
寂しそうに目を細める。
「トラヴィスは、それについて何か言ったのか?」
「魔力が無くてもいいって。トラヴィス様のお仕事の手伝いをすればいい、とおっしゃってくださいました」ですが、と言葉を続ける。
「魔力の無い私が、トラヴィス様の側にいるのはふさわしくないと思っております」
トラヴィスが手元にレインを置いておきたいという気持ちは本当だろう。なぜか彼は、十二も年の離れている妹を好いている。そのための婚約だ。てっきりその魔力に興味があるのかと思ったら、どうやらそうでも無いらしい。
だが、レインがこうなってしまった以上、二人の結婚は認めない方がいいと思っている。相手があのトラヴィスだから。
そう思ってトラヴィスに頼んでみたが、彼は婚約破棄をしないと言い張っていた。
レインとトラヴィスの婚約には、ライトの父親の契約魔法がかけてある。本来であれば、契約魔法をかけた父親が認めれば破棄できたはず。だが、その父がすでにいない。となると、本人たちの意思が優先されるわけだが、その本人が拒んでいるのではどうしようもない。
「あの、お兄様」
「なんだ?」
魔力鑑定をしたままだから、レインの手はライトに握られたまま。その彼女の手に力が入ったことをライトは感じた。
「私、魔導士団を辞めます」
「そうか」
彼女の告白を冷静に受け止めることができる自分がいた。不思議なくらいに。
「できれば、トラヴィス様との婚約も」
続きを聞かなくてもわかる。婚約を解消したい、ということだ。
「わかった。トラヴィスは明日から遠征に出る。戻ってきたら、俺から話しておこう」
「トラヴィス様はいつ頃お戻りになる予定ですか?」
「ああ。北の森の方と言っていたから、十日程ではないか?」
それを聞いて、レインは少し考え込む。
「その間に、私はここを出ようと思っています」