魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「あの人の死因が、魔力枯渇かその病気であるかなんて、よくわからなくてね。あの人が亡くなるときに魔力切れを起こしていたのは事実だし。だけど、どちらが直接の原因であっても、恐らくレインもいずれはそうなるのかな、なんて、漠然とそう思っていたから」

 そう思っていたから、この家を出て薬草探しの旅に出た、と言っても過言ではない。

「だから。本当にあなたたちのおかげね。私の大事な娘を助けてくれてありがとう」

「レインは俺の大事な妹だから」

「ええ。ありがとう」

義母(かあ)さんも、俺の大事な義母(かあ)さんです」

 そう、義母(はは)親は義母(はは)である。
 ライトはきつく心に言い聞かせ、お茶を一気に飲み干した。

「では、早速。レインのところへ行きましょう」
 突然のニコラからの提案。

「今からですか?」

「ええ、善は急げよ」

 嫌がるライトを無理に引っ張って、ニコラはイーガン家を訪れていた。トラヴィスとレインは揃って休みの日が多い。これはドニエルによるもので、二人の休日を合わせないと、休日明けのトラヴィスがものすごく不機嫌だから、という理由による。

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