魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
28.私の娘ですもの
トラヴィスが寝室へとやってきた。レインはベッドの上で正座して、じっと母親からもらった回復薬を見つめていた。
「どうかしたのか?」
「いえ、お母様からいただいた回復薬。飲んでいいものか悪いのか」
ふっと、そこでトラヴィスは笑みを漏らした。
「飲んでみたらいいんじゃないのか。せっかくニコラさんが作ってくれたんだ。それに、今だって魔力は安定していないし、いつ枯渇が起きてもおかしくない」
「でも。その、トラヴィス様と致せば、魔力は回復いたしますが?」
「だが、私がいないときはどうするのだ?」
彼はいたずらを仕掛けた子供のように笑みを浮かべた。
「それは、困りますね。他の方と、というわけにはいきませんもの」
「君は、私を挑発しているのか?」
トラヴィスがゆっくりとベッドに座った。そこが静かに沈む。そして彼が右手を広げてきたので、レインはその腕にすっぽりとおさまった。
「私が恐れているのは、君を誰かに奪われることと、君を失うことだ」
言うと、トラヴィスは彼女の髪に口づけた。
「私も。トラヴィス様を失うことが怖いです。それと同時に、トラヴィス様の隣にふさわしいような魔導士になりたいとも思っています」
「君は、とても優秀な魔導士だ。むしろ、私が君の隣にいてもいいのかどうかと、不安になるときもある」
トラヴィスはレインをふわりと抱き上げると、自分の膝の上に座らせた。そして、彼女が手にしていた小瓶を奪い取ると、勢いよく蓋をあけ、それを一気に口へと含む。
「どうかしたのか?」
「いえ、お母様からいただいた回復薬。飲んでいいものか悪いのか」
ふっと、そこでトラヴィスは笑みを漏らした。
「飲んでみたらいいんじゃないのか。せっかくニコラさんが作ってくれたんだ。それに、今だって魔力は安定していないし、いつ枯渇が起きてもおかしくない」
「でも。その、トラヴィス様と致せば、魔力は回復いたしますが?」
「だが、私がいないときはどうするのだ?」
彼はいたずらを仕掛けた子供のように笑みを浮かべた。
「それは、困りますね。他の方と、というわけにはいきませんもの」
「君は、私を挑発しているのか?」
トラヴィスがゆっくりとベッドに座った。そこが静かに沈む。そして彼が右手を広げてきたので、レインはその腕にすっぽりとおさまった。
「私が恐れているのは、君を誰かに奪われることと、君を失うことだ」
言うと、トラヴィスは彼女の髪に口づけた。
「私も。トラヴィス様を失うことが怖いです。それと同時に、トラヴィス様の隣にふさわしいような魔導士になりたいとも思っています」
「君は、とても優秀な魔導士だ。むしろ、私が君の隣にいてもいいのかどうかと、不安になるときもある」
トラヴィスはレインをふわりと抱き上げると、自分の膝の上に座らせた。そして、彼女が手にしていた小瓶を奪い取ると、勢いよく蓋をあけ、それを一気に口へと含む。