魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「何?」
思わず、ライトは握っていた手に力が入ってしまった。「痛いです、お兄様」というレインの言葉を聞いて、我に返る。
「ここを出るってどういうことだ?」
「魔力を失った私が、お兄様の庇護の元で暮らす意味もありません。祖母の元へ行こうかと思っています」
「レイン。お前は何か勘違いをしているようだが。血は繋がっていなくても、俺たちは兄妹だ」
「お兄様のその気持ちだけで十分です」
「父も俺も。お前の魔力だけのためにお前を引き取ったわけでは無いぞ」
「はい。それも承知しております。ですが、これ以上魔力を失った私がここにいては、お兄様たちに迷惑をかけてしまいます」
レインは下を向いた。目からあふれ出る何かを隠すかのように。ライトは握っていた手を離して、妹の頬に触れた。
「俺がどれだけ止めても、お前は行くんだろう? それだけお前の意思は固いのだろう?」
頷く。
「トラヴィスには会わないで行くつもりか?」
頷く。
「そうだな。トラヴィスには会わない方がいいだろう。あれは、絶対にお前を手放さないからな」
「私は、トラヴィス様のお側にいる資格を失ったのです」
「レイン。一つだけ聞いてもいいか?」
「はい」
「お前は、トラヴィスのことが好きなのか?」
その質問の答えは、わかりません、だった。
思わず、ライトは握っていた手に力が入ってしまった。「痛いです、お兄様」というレインの言葉を聞いて、我に返る。
「ここを出るってどういうことだ?」
「魔力を失った私が、お兄様の庇護の元で暮らす意味もありません。祖母の元へ行こうかと思っています」
「レイン。お前は何か勘違いをしているようだが。血は繋がっていなくても、俺たちは兄妹だ」
「お兄様のその気持ちだけで十分です」
「父も俺も。お前の魔力だけのためにお前を引き取ったわけでは無いぞ」
「はい。それも承知しております。ですが、これ以上魔力を失った私がここにいては、お兄様たちに迷惑をかけてしまいます」
レインは下を向いた。目からあふれ出る何かを隠すかのように。ライトは握っていた手を離して、妹の頬に触れた。
「俺がどれだけ止めても、お前は行くんだろう? それだけお前の意思は固いのだろう?」
頷く。
「トラヴィスには会わないで行くつもりか?」
頷く。
「そうだな。トラヴィスには会わない方がいいだろう。あれは、絶対にお前を手放さないからな」
「私は、トラヴィス様のお側にいる資格を失ったのです」
「レイン。一つだけ聞いてもいいか?」
「はい」
「お前は、トラヴィスのことが好きなのか?」
その質問の答えは、わかりません、だった。