魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「手伝わせて悪かったな」
トラヴィスが使い捨て用のカップに入れた飲み物を手にしながら現れた。そのカップをライトの額の上に置いたため、すかさず彼もそれに手を添えた。
「なんだ、お前がこれを寄こすなんて、気持ち悪いな」
身体を起こして向きを変え、ソファに深く座り直す。トラヴィスは満足したように鼻の先で笑うと、向かい側のソファに浅く腰かけた。
「酷かっただろう?」
トラヴィスは自虐的に笑う。両膝の上に両手をついてその手を組み、そこに顔を埋めた。
「ああ。今まで俺たちまで呼び出されたことなど、なかったしな」
そこでライトは彼から受け取ったカップを口につけた。
「別に、魔物が特別強かったわけではないんだ」
まるで言い訳をするかのようにトラヴィスが口を開いた。
「相手はいつもと同じだった。だが、こちらがいつもと違っていた。レインがいなかった。彼女がいないというだけで、この有様だ。たった一人の魔導士がいないだけで、こうなる。部下からもなぜレインがいないのかと、聞かれた。彼らが頼りにしていたのは私では無かった。レインだ」
苦しそうにそれを吐き出した。
「レインは、まだ魔力が戻っていない。だから、魔法は使えない。お前たちの期待に添えることはできない」
ライトの口調は落ち着いていた。自分でも驚くくらいに。
「分かっている。だからこそ、情けない」
トラヴィスが使い捨て用のカップに入れた飲み物を手にしながら現れた。そのカップをライトの額の上に置いたため、すかさず彼もそれに手を添えた。
「なんだ、お前がこれを寄こすなんて、気持ち悪いな」
身体を起こして向きを変え、ソファに深く座り直す。トラヴィスは満足したように鼻の先で笑うと、向かい側のソファに浅く腰かけた。
「酷かっただろう?」
トラヴィスは自虐的に笑う。両膝の上に両手をついてその手を組み、そこに顔を埋めた。
「ああ。今まで俺たちまで呼び出されたことなど、なかったしな」
そこでライトは彼から受け取ったカップを口につけた。
「別に、魔物が特別強かったわけではないんだ」
まるで言い訳をするかのようにトラヴィスが口を開いた。
「相手はいつもと同じだった。だが、こちらがいつもと違っていた。レインがいなかった。彼女がいないというだけで、この有様だ。たった一人の魔導士がいないだけで、こうなる。部下からもなぜレインがいないのかと、聞かれた。彼らが頼りにしていたのは私では無かった。レインだ」
苦しそうにそれを吐き出した。
「レインは、まだ魔力が戻っていない。だから、魔法は使えない。お前たちの期待に添えることはできない」
ライトの口調は落ち着いていた。自分でも驚くくらいに。
「分かっている。だからこそ、情けない」