魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「なぜ、引き留めなかった」

「俺が引き留めなかったと思っているのか。俺が追い出したとでも思っているのか」
 ライトもやられてばかりではいられないと、トラヴィスに対して軽く魔法を放った。また閃光が生まれる。すかさずトラヴィスは防御魔法を張り、それを回避する。

「レイン本人が望んだことだ」
 ライトは言葉と同時に魔法を放つ。バチッと光る。
「レインは、妹は。お前の側にいる資格を失ったと、そう言ったんだ。もう、お前の側にいられないってな。そう言った、レインに気持ちを考えたことがあるか」

「だから、追い出したのか」

「違う。追い出してはいない。レイン本人が望んだ。何度、そう言ったらわかる」

「あの家を出て、レインに行くところなどあるのか」
 次はトラヴィスが魔法を放った。ライトはすかさず防御魔法を張る。放たれた光は防御魔法によって拒まれ、そこでまた光が飛び散った。

「ある。だけど、お前には教えない」
 ぐっとライトはトラヴィスを見上げた。ゆっくりと立ち上がる。
「レイン本人が望んだんだ。お前には会いたくない、と。ここにはいられない、と」

「レインの口からそれを聞くまでは信じない」
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