魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「今すぐ婚約を解消しろ」
 ライトはトラヴィスを見下ろした。

「それは、できない」

「お前はなぜそこまでレインに執着する」

「それは」
 と言いかけたが「今は言えない」

 はあ、ライトは肩で大きく息をついた。

「これではいつまで経っても埒が明かないな。ま、いい。お前に少しだけ猶予をやる」

 トラヴィスは顔を上げ、ライトの目を見た。

「半年以内に、レインの魔力について何かしら結果を出せ」

「どういう、意味だ?」

「半年以内にレインの魔力を回復させてみろ。そうしたら、お前たちの結婚を認めてやってもいい」

「半年? その半年に何の意味がある」
 トラヴィスにはその半年の意味がわからない。

「あのまま魔力が枯渇し続けると、レインは間違いなく死ぬ。あれの父親がそうであったように」

「レインの父親? 元団長ではないのか?」

「ああ、そうか」
 そこでライトは鼻の先で笑った。
「お前は知らなかったのか。レインの本当の父親を。俺とは血の繋がりが無いということを」

「なんだと?」

「レインの本当の父親は、大魔導士ベイジル様だ」
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