魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「これじゃ、どっちが遊んでもらっているのか、わからないね」
 幼い子供たちに囲まれながら、その子たちと同じような笑顔を浮かべているレイン。

「おばあちゃんの跡継ぎ?」
 母親は目を細めて、言う。

「そんな立派なもんじゃないよ。今はここに勉強にきているだけだ」

「そういえば、ニコラは元気かしら」
 この母親は、昔からのニコラとの知り合い。

「元気も何も無いね。昔からの放浪癖で、今でもこうやって娘を置いて放浪してるさ。子供たちに聞いたら、ときどき手紙は届くらしいよ。この大陸のどっかにはいるってさ。私には手紙の一つも寄越しやしないのにね」

「この大陸のどこかって。もう、ニコラらしいわね」
 母親はぷっと笑った。
「私も、たまには娘たちを置いて、どこかに放浪したくなるときもある。一日中、この娘たちと一緒にいると、気が滅入ってしまうときもあるの」
 だから、祖母はこの母親に薬を渡していた。気持ちが穏やかになるような薬を。
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