魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「レインちゃん。そろそろおいとましようかね」
 祖母が言い、よっこらせ、と立ち上がる。

「お姉ちゃん、もう、帰るの?」
「おねーちゃん、もっとあそんで」

「こらこら、アニー、シャリー。お姉ちゃんはお仕事があるから」

 こんなとき、レインはどのような言葉を口にしたらいいかがわからなかった。こんなこと今までなかったし、誰も教えてくれなかったから。

「また、来てもいいですか?」
 と、姉妹の母親に聞くことしかできなかった。

「ええ、もちろん。今度はおばあちゃん抜きでいらっしゃい」
 母親がそう言うものだから。

「あらあら。年寄りは邪魔ってことかい?」
 と祖母も笑って答える。
 でもレインはそれにどうやって返事をしたらいいかが、ますますわからない。
 ただ、小さく「また、来ます」とだけ言った。
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