魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
9.今はこれで我慢する
 ライトは義母に手紙を書いていた。ただ問題は、彼女がどこにいるかわからない、ということ。この手紙も届くかどうかわからない。とりあえず、以前届いた手紙に記載のあったところを宛先に書いてみた。
 内容はもちろんレインの魔力が枯渇してしまったこと。回復薬でも回復しないこと。ということは、彼女の父親と同じ状態に陥っているのではないか、という推測。それから、彼女は祖母に預かってもらうことにした、ということ。
 自分の感情は記載せずに、事実のみを淡々と書いた、つもりだが。もしかしたら、自分の気持ちがあふれ出てしまっているかもしれない。義母(はは)親は気付いてくれるだろうか。

 それから、思い出したようにベイジルの資料や論文はあるのか、ということも書いてみた。ベイジルと共に時間を過ごした義母であれば何かしらわかるかもしれない、という期待を込めて。

 そこまで書くと、ライトはペンを置いた。頭の上で両手を組み、そのまま上へと伸びる。

 やはり、レインは母親と一緒にいるべきだったのではないか、という後悔が込みあげていた。自分の我儘で彼女を手元に置いたことが、彼女の魔力枯渇を早めてしまった原因なのではないか、とも思えてならない。
 早かれ遅かれこうなることもわかっていたはずなのに、なぜ魔導士団へ入団させてしまったのか。
 後悔しか出てこない。
 だが、もしかしたら彼女はそうならないかもしれない、という願いがあったのかもしれない。
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