魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
 そのライトの一言だけで、そこに結びつけるアーロンもさすがだと思う。
 ライトはゆっくりと頷いた。だが、正確には調べているのはベイジルの娘についてなのだが。

「ベイジル様は、持病の悪化で亡くなったとされていますが。実は魔力枯渇による生命力の枯渇で亡くなったのではないかとも、裏では囁かれています。私も魔法研究所に所属する者として、それらはとても興味深い議題でもあります」

「なるほどね。だが、それは、君のお父さんからの情報だね」
 再びライトはゆっくりと頷いた。

「そうか、団長はそこまで君に話していたのか。ベイジルの本当のことを知る者は団長と当時の副団長であった私くらいだからね」
 さすが、当時の副団長。きっと、アーロンはベイジルのことを嫌っていなかったのだろう。ベイジルがアーロンのことをどう思っていたのかはしらないが。何しろ、人間嫌いと伝えられているくらいだから。

「どこから話そうか」
 アーロンは遠い目をしながらそう言った。彼の話は長くなりそうだ。
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