魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
12.嬉しかったんだろう
こっそりと部屋の中を覗くと、レインは小さな寝息を立てていた。彼女に気付かれないようにそっと扉を閉める。
「もう、眠ったようですね」
ライトは祖母に向かって言う。そして、テーブルに備え付けられている椅子へと腰をおろす。
「久しぶりに、ライトくんに会えて嬉しかったんだろう」
祖母はお茶を二つ淹れた。一つをライトの方へと置く。
「レインに聞かれたくない話なんだろう?」
向かい側に座る祖母のそれに頷く。
「あの。ベイジル様の論文や資料は、この家に残っていますか?」
両手でお茶を抱えながら、ライトは尋ねた。
「うーん、無いね」
だが、即答だった。
「見るからにこんな質素な家だ。あんな大層なものがあったら、すぐに気づくさ」
「大層なもの?」
「本当にあの人は、ここに来てから書き物しかしてなかったよ。その辺に紙を散らかして、よくニコラに叱られていた」
顔に皺を刻んで微笑んだのは、やはり懐かしさからくるものなのだろう。きっとそこには仲睦まじい光景が繰り広げられていたはず。
「両手では持ちきれないくらいの紙の山だったね」
そこでなぜかライトはトラヴィスの机の上を思い出した。それほどの書類、いや論文というか資料。ベイジルはそこまでして何を書き留めていたのか。
「仮に、この家にあるとしたらニコラの部屋だろうね。今はレインが使っているけど。だけど、見た通り、何もなかっただろう?」
ご指摘の通り。
「やはり、義母さんに聞かないとわからないですかね」
そこでライトはため息とまではいかないような息を吐いた。
「そうだね。ああ見えても、あの二人は本当に仲が良さそうだったよ。まあ、だからレインが生まれたわけだがね」
祖母の話とアーロンの話は相反するものにも聞こえる。一体、ベイジルとはどのような男だったのだろうか。
謎は深まるばかり。
「もう、眠ったようですね」
ライトは祖母に向かって言う。そして、テーブルに備え付けられている椅子へと腰をおろす。
「久しぶりに、ライトくんに会えて嬉しかったんだろう」
祖母はお茶を二つ淹れた。一つをライトの方へと置く。
「レインに聞かれたくない話なんだろう?」
向かい側に座る祖母のそれに頷く。
「あの。ベイジル様の論文や資料は、この家に残っていますか?」
両手でお茶を抱えながら、ライトは尋ねた。
「うーん、無いね」
だが、即答だった。
「見るからにこんな質素な家だ。あんな大層なものがあったら、すぐに気づくさ」
「大層なもの?」
「本当にあの人は、ここに来てから書き物しかしてなかったよ。その辺に紙を散らかして、よくニコラに叱られていた」
顔に皺を刻んで微笑んだのは、やはり懐かしさからくるものなのだろう。きっとそこには仲睦まじい光景が繰り広げられていたはず。
「両手では持ちきれないくらいの紙の山だったね」
そこでなぜかライトはトラヴィスの机の上を思い出した。それほどの書類、いや論文というか資料。ベイジルはそこまでして何を書き留めていたのか。
「仮に、この家にあるとしたらニコラの部屋だろうね。今はレインが使っているけど。だけど、見た通り、何もなかっただろう?」
ご指摘の通り。
「やはり、義母さんに聞かないとわからないですかね」
そこでライトはため息とまではいかないような息を吐いた。
「そうだね。ああ見えても、あの二人は本当に仲が良さそうだったよ。まあ、だからレインが生まれたわけだがね」
祖母の話とアーロンの話は相反するものにも聞こえる。一体、ベイジルとはどのような男だったのだろうか。
謎は深まるばかり。