魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「それで、何の用だ」

「ベイジル様の資料を探してきた」

「無かっただろう?」

「そうだ」

「俺も探したけれど、無かった」
 ライトは言った。

「この、研究所には無いのか?」
 トラヴィスは尋ねた。

「うーん」
 ライトは唸るしかなかった。トラヴィスの指摘はごもっとも、なのだが。
「残念ながら、無い」

「禁書庫にも無かったな」

「そうだ」

「だったら、どこに?」

「そんなの、俺も聞きたいくらいだ」
 ライトは大きくため息をついた。結局、導き出された答えは同じ。
 ベイジルの資料は存在しない、ということで。
 つまり、レインの魔力枯渇についてのヒントを手に入れることができない、というわけで。
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