魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
 そんな二人の荒行を見せて一月(ひとつき)
 一つの謎が解けた。

義母(かあ)さん。ベイジル様の本当の死因がわかりましたよ」

 ライトが義母を書斎に呼び出し、放った言葉はそれだった。

「魔力の枯渇、ではなくて?」

 テーブルの上には白い湯気が漂うお茶が三つ並べてある。淹れたのは侍女ではない。ライト。この話をするために、使用人には退席してもらった。

「魔力枯渇が起こったとしても、すぐには生命力の枯渇に直結しないようなのです」

 それがあのベイジルの謎の料理本を解読した結果。
 魔力枯渇から約一年後、生命力の枯渇が始まるらしい。しかし、ベイジルは魔力枯渇後、一年も経たないうちにその命を落としている。つまり彼の死は魔力枯渇とは無関係ということになる。

「ニコラさんには、これを。ベイジル様の資料を書き写して、解読したものなりますが。ニコラさんにはこれを読んでもらいたいのですが」

 トラヴィスは一冊にまとめた資料をニコラに手渡した。

「これは?」

「ベイジル様の日記のようでした。解読のために、中身を読んでしまいました。すいません」

 トラヴィスは頭を下げる。
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