闇夜ヨルの恐怖記録 4
でもそれは嫌な視線ではなかった。


イジメられていたときのように、笑いものにされてバカにされていたときとは違う。


好奇心と少しの羨望の眼差しだ。


ユウナは気分がよくて大きく息を吸い込んだ。


まるで今この瞬間の、この空間を自分の中に取り入れるように。


「あ、そういえばキミって小学校の修学旅行でおねしょしたって本当? あれ笑っちゃったんだけど」


口元に手を当てて本当に笑ってみせた途端キミは勢いよく立ち上がった。


そのせいで椅子が後方に倒れて大きな音を立てる。


なにかやりかえされると思って身構えたけれどキミはチッと舌打ちをしてユウナを睨みつけると、そのまま教室を出ていってしまった。


ユウナは倒れた椅子を起こしてクラスメートたちへ向けて苦笑いを浮かべる。


するとそれに合せるように数人の生徒が笑ってくれた。


自分はもう孤立はしていない。


そう思った瞬間だった。
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