闇夜ヨルの恐怖記録 4
『お父さんの都合ってなに?』


ユリが攻めるような口調になって聞く。


マヤちゃんは少し肩震わせ、それから『そんなのどうでもいいじゃん。それより本の話をしようよ』と、話題を変えようとする。


だけど2人は許さなかった。


自分たちは嘘をつかれていたのだということが、すでにわかりはじめていたからだった。


こうなると少し無理してでもマヤちゃんに本当のことを言ってほしかった。


『……前の学校は私にはあわなかったの』


しばらく無言で見つめていたら、マヤちゃんは観念したように呟いた。


『どうして?』


『小学校受験をして入った学校だったの。小学校から大学までの一貫校。でもね、そこにいるのはお嬢様ばかりで、なんだか息がつまっちゃって。私なんて、元々そいういうの向いてないんだと思う。お父さんやお母さんからも、マヤはどうしてそんなに普通なんだってよく言われるんだ』


それはマヤちゃんにとっては本当の悩みだったに違いない。


転校してしまうくらい、お嬢様の生活になじめなかったのだ。


だけど当時のユキコたちにはそれがわからなかった。


こんなに大きな家に暮らして、欲しいものは何でも買ってもらえているだろうし、おまけにお嬢様だ。
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