闇夜ヨルの恐怖記録 4
高級な絨毯に紅茶のシミがついてしまうかもしれないと慌てていると、母親の視線がポラロイドカメラに向いていることに気がついた。


「そのカメラ……」


「あ、これ。中古ショップで買ったんです」


母親が手を伸ばしてきたので、ユキコはカメラを手渡した。


するとなにかを確認するように色々な角度からカメラを確認しはじめる。


その様子はとても真剣で、声をかけることも躊躇するくらいだった。


しばらくカメラを確認したあと、それを大切そうに胸に抱きかかえた。


「あの……?」


「ごめんなさいね。これを見て」


目に涙を浮かべながら、カメラの裏側を見せてきた。


そこにはマジックでMAYAと書かれている。


それを見た瞬間ユキコとユリは同時に息を呑んでいた。


まさかこのカメラって……。


「交通事故にあったあの日も、マヤはこのカメラを持っていっていたの。だけど事故にあってバタバタしている間にどこかに行ってしまって、ずっと探していたのよ」


「そうだったんですか……」


呟き、ようやくすべての謎が解けたと感じた。


最初からこのカメラにはマヤちゃんの気持ちが宿っていた。


それを手にしたのがユキコだったから、マヤちゃんは姿を表したのだ。


あの洋館はなんの関係もなかった。


ユキコはカメラを母親から受け取ると、マヤちゃんの枕元にそっと置いた。


「これ返すね。それから、途中からマヤちゃんのこと無視するようなことをして、本当にごめんね」


「私もごめん! もう、絶対にあんなことしないから」


ユリもベッドに近づいてきて、マヤちゃんの手を握りしめて言った。
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