恋行き電車パスポート
「あの、」
「えっ、はい……。えっと」
俺は一か八か彼女に話しかけた。完全にノープランで。
「あのっ、これ……!」
馴れていないせいで、かすかに声が裏返る。
でもそんなことは気にしない。俺はバックからあの、拾ったパスポートを取り出した。
「あっ、それ……っ!」
「結川駅南口の階段に落ちていたもので……」
俺はそれを差し出すと、彼女はそっと受け取った。
「ありがとうございます。無くて困ってて……」
まあ、無かったら困るだろうけど。
というか、同一人物だったとは。