最愛ジェネローソ
頷きながら、料理を頬張るよし君は、少し眉を下げて言った。
「そうやって一生懸命なのは、昔から華さんの良いところだけど。抱え込み過ぎないようにね」
「……うん。ありがとう」
「こんなことを言ったら、余計にモヤモヤさせちゃうだろうけど、華さんはあくまでアドバイスに留めないと。実際にどうにか出来るのは、その新人くんだけだからね」
「うん。分かった」
「うん。じゃないと、首を突っ込みすぎたあまりに、物事が上手くいかないごとに、全て華さんのせいにされちゃうよ」
「わ、分かった。気をつける」
周りがとやかく言ったところで、自分を最終どうにか出来るのは、自分だけ。
それも実感が湧く。
「すみません」を事あるごとに発していた自分が「すみません」の代わりに「ありがとうございます」「頑張ります」を使い初めてからは、自身が変われた実感を、あの瞬間を覚えている。
それも、自分が思い付いたことではない。
信頼をしている人たちに、助言をしてもらえたから。
「たかだか、それだけで何かが変わるものか」なんて軽んじていた自分が、今ではとても恥ずかしい。
今、よし君も自分を、本当に心配して、助言をしてくれた。
「本当に、ありがとうね」
よし君は、首を横に振る。
「多分だけど、華さん、今の話、まだ吹っ切れてないでしょ?」
「え、まぁ。新人くんの加わった新しい環境に、慣れるまでは、ね」
「それも分かるけど。その環境に居ない時くらい、俺と居る時くらいは、一旦、置いといてほしいな」
「あ……ごめんね。仕事の愚痴言ったりして」
「大丈夫! 愚痴は吐き出さないといけないと思うんだけど。そうじゃなくて……」
よし君は言葉を止めて、もじもじしている。
自分もそれにつられて、おどおどしている。
そして、目が合い、よし君はへにゃっと笑った。
意味が汲み取れず、こちらも同じような笑みで返すと、よし君は話し始めた。
自分は笑い出してしまいそうだったのに、ぐっと笑いを押し込んだ。
「……華さんのこと、癒したいと思って」
「えっと、十分癒してもらっておりますが」
「それなら、嬉しいだけど。出来ることなら、もっと癒したい」
「こちらこそ。いつも気を遣わせて、ごめんね」
「ううん。華さんと居る時間、めちゃくちゃ幸せだよ」
よし君のド直球な言葉に、息が止まる。
あまりにも恥ずかしくて、顔も熱くて、自然と目が逸れてしまった。
ここで「私も」なんて返せたら、きっと素敵な雰囲気になる筈なのに。
まさか自分に、そんなドラマや小説の様な、綺麗な流れが作れる筈もなく、口をつぐんでしまう。
でも、よし君は呆れない。
いつでも彼の寛大さに感服してしまうのは、こんな時でさえ嬉しそうに微笑んでくれる、その表情を見た時。
「可愛い。照れてる」