愛が欲しかった。
取り巻きを連れて歩く森本の後ろ姿を眺めていると、本当に女番長という敬称がお似合いだった。取り巻き二人もなかなかに小物感が出ているように見えてしまうのが不思議だ。対等な付き合いをしているのなら申し訳ない感想だけど。
取り巻きの一人は私服で、高校に通っているのかもわからないし、少し化粧が濃い。もう一人は同じ高校だということは着ている制服を見ればわかった。ただし、面識もなければ名前も知らないし、今の今まで存在すらしらない女生徒だった。一見すると大人しそうにも見えるが、やはり森本と友達ということは、まともな生徒ではないかもしれない。それに如何にもって感じの手提げ袋を引っさげている。中には何も入っていないようにみえる。
頼むから止めてくれよ。そうぼくは思った。
やはりと言うべきなのかそうだよな、と、納得するべきなのかわからないがぼくたちは今、デパートの中にある取調室のようなところに丁重に案内を受けて、席に座り、反省を促されている。
当初の予定では浜下がピアスを買ってもらうはずだったが、森本たちは二手に分かれると、買物をする森本と浜下を隠れ蓑にして、取り巻きの二人が店内の物を物色していたのである。その時のぼくは吞気にもピアスを手に取り、色々あるななどと感心していたのだった。