愛が欲しかった。
　九条家の者が九条デパートで万引きを行うなど万死に値する行いで、その恥も責任も現保護者である香りさんが被ることになる。それ故に信じらないって表情を浮かべている香りさんがぼくを見つめていた。

　まるで、ぼくが香りさんに反抗してやったと思っているかもしれない。だけど、ここで謝ることは、ぼくが万引きに加担したことになってしまう。

「いいわ、誠、帰ってから話しましょう」
　香りさんはそういうと、店舗の店長と話し合い、示談するように今回の被害額を支払った。それから涙ぐんだ香りさんは部屋を後にして、ぼくたちは解放されたのだった。
「ごめん」
　浜下がぼくに謝罪をいれる。
「浜下が謝る必要はないだろう、巻き込まれただけだし」
「でも、お前の親戚は誤解してるだろう」
「何とかなるさ」
　強がりでそう答えた。それよりも助かったと安堵してケラケラ笑う森本たちに対して怒りが沸々と湧いてくる。殴ってやろうかと考えてしまう。
「ごめんなさい。」
　取り巻きの大人しそうなほうがぼくに謝罪をした。本当に悪いと思ったのか深々とお辞儀をする姿をみて、ぼくは心の拳を下した。本当は殴ってもいいんじゃないかとさえ思っていたのだけれど、女性に暴力を振るのは最低な事だと思って我慢した。

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表紙・目次

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