愛が欲しかった。
 帰宅すると部屋は真っ暗で灯りの一つもついていない。どうやらまだ、香りさんは帰宅していないようだ。そのことに安堵するぼく。ぼくは灯りをつけることなく自分の部屋のベッドになだれ込む。今日だけは、香りさんの帰りが遅くなればいいとさえ思ってしまう。

 逃げていてはダメだ。
 分かってはいるけれど怖かった。
 もし、香りさんに見捨てられるとまた親戚の間をたらいまわしにされる。
 またお荷物を見るような目を向けられるのかとおもうと自分の存在が自体が悪いものだと思ってしまうのだった。

 両親が事故で死んだとき、どうしてぼくは一緒にいなかったのだろうか?
 ネガティブな事が頭をグルグルと巡って気分が凄く落ち込んでいく。

 気付くと夜の10時を過ぎていた。普段なら7時には帰宅しているはずなのに香りさんはまだ帰ってこなかった。仕事で何かあったのか、それともぼくの顔を見たくないということなのか、香りさんの帰りが遅くなるほど、不安は募るのだった。

 あれほど顔を合わしたくないと思っていたのに、感情というもはコロコロと変わるものだ。
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