愛が欲しかった。
 思春期の女の子からしてみれば、あまり親しくもない親戚というだけのわけのわからない男性と一緒に暮らすのは苦痛極まりないのだろう。彼女達の猛反対によってぼくは親族会議に呼び出されるはめになった。
 親族達のぼくをみる目は忘れることはできない。声が聞こえるような眼差しだった。「誰が引き取るんだよ」って、まるでゴミを見るような目だった。
 厄介者だということをぼくは前の家で十分に理解していたので、その親族会議では一言も発言しなかった。さすがに中学一年生で一人暮らしをしたいと思っていても、それは色々許されない。親族達の体裁や社会のルールとしても。
 その時、名乗り出てくれたのが叔母の香りさんというわけで、香りさんは笑顔で「じゃあうちにくるか」とぼくの頭を優しくなでてくれた。
 香りさんには母親の面影が少しあったので、ぼくは少しだけ嬉しく思ったのだった。似ているのは顔だけで、雰囲気は姉御肌のような人だった。
 実際に暮らして見ると姉御というよりは、生粋の仕事人間といった感じで、面倒を見てもらっているというよりは、ただ一緒に暮らしているという感じだった。
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