愛が欲しかった。
二人で並んで壁際の席で昼食をとっていると、何やら不穏な空気が漂いはじめる。どうも背後に数人の気配がする。振り変えるのもおこがましいというか振り返ると今にも襲われそうな雰囲気が漂う。まいったなとぼくは思う。横に座る浜下も後ろの気配には気づいているようで、あえて無視を決め込んでいるようだった。けれど、後ろにいた数人のリーダー的存在がしびれを切らした。
「おい、いつまで無視してんだよ」
振り返るとそこにいたのは、高吉だった。高吉は1年生の番長的な存在で、どっかのチームの総長を努めていた。そいつがわんさか取り巻きを引き連れてやってきたのだった。
「なんだよ?」
浜下が強気で言葉を返す。
「お前、昨日、俺の女とおっただろうが?」
昨日の女?誰?まさか森本か?いや、ないない、森本とつきあうやつはこの学校にはいない。なら二人のどちらかか?
「ちょっと待って、お前の女なんて知らねえ」
と、浜下が言うと高吉は「なにいってんだよ、見たんだよ。]と高吉は言った。
さすがにこの人数相手に喧嘩しても勝ち目はないだろう。巨漢の浜下も同じ考えのようだった。
「悪かったって、お前の彼女だとは知らんかった」
浜下がそういうと、高吉は満足したような顔をする。ようは、謝罪をさせて、自分のほが上だと認識させたいだけなのだ。はじめから殴り合いをするつもりはないようにみえる。
「おまえはどうなんだよ」
高吉は矛先をぼくに向けてきた。
殴り合いをする気は毛頭ないぼくは、
「悪かったよ。でも、どっちが彼女?」とついつい訊いてしまった。
「理恵子のほうだよ」
理恵子と言われても全くピンと来ない。二人の名前を訊いていないのだから。
「同じ学校の子?それとも私服きてた子?」
「私服のほうだよ」と、高吉は言った。