愛が欲しかった。


 朝、目を覚ましたぼくは香りさんが起きるよりも早く身支度を済ませた。学校に行くには、少し早すぎると思いながらも登校をはじめる。昨日のことでぼくは拗ねている。こどもっぽいことしていると分かっていても割り切れない思いがある。

 好きだと言って返ってきた言葉が馬鹿な事。
 正直言ってきつかった。
 やはり、親戚に向かっていうべき言葉ではなかったんだ。
 後悔しかなかった。
 分かっていたはずなのに、報われる思いじゃないことなど、初めから。
 どうして、ぼくは、こんなにも香りさんのことを好きになってしまったんだろう。
 どうして、こんなにも胸が苦しいのだろう。
 失恋ってこんな気持ちをするのか。
 こんなに苦しいなら本気になんかならなければ良かった。

 学校前に着くと朝練をしている生徒の姿がちらほらと見えた。学校の外周を走っているのは、野球部とサッカー部だろう。グランドには陸上部の姿も見えた。額に汗をかく姿にストレスの影など微塵もなかった。

 気持ちよさそうだな。

「おお、九条、朝早いな」
 そう言って声をかけたのは、浜下だった。
「そう言えば、浜下はバスの都合で登校が早いんだったな」
「ああ、一本逃すと遅刻してしまうからな」
「バスが少ないの?」
「いや、車がこんで進まないんだよ。この先の工場のせいでな」
「なるほど」
 区画整理が追いついていない区間があるということか。
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