愛が欲しかった。
 
 浜下と合流したぼくは二人で教室に向かった。朝が早いとすれ違う生徒の姿のまばらだった。だけど、清々しいという気持ちもあった。朝の喧騒がないだけなのに、こんなにも風景が違って見える。差し込む朝日もいつもは気づかないのに、今日は眩しい。
「おまえさ、こんなに朝早く来るなら、武本を教室で待たずに校門で待てばいいんじゃない?」
「いや、それな、試したことあるんだわ」
「で、どうなった?」
「武本が来るのって遅いんだわ」
 そうだった。武本が教室に入るのは決まってホームルーム直前だった。
「それよりもおまえは好きな子できたんか?」
「できてないな」
 失恋したばかりだし。そう簡単に好きになるかよ。
「そか、おまえ、ホモじゃないよな?」
「おい、冗談でも殴るぞ]
 好きな人ならずっといる。ただそれを口に出せる人じゃない。やっぱり口にすることができない人なんて好きになったらいけないんだよな。大手を振ってデートできないし、ダブルデートだってできない。きっぱり諦めるべきなんだよ。そう思ってもまだ香りさんのことを考えているぼくがいた。
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