愛が欲しかった。
 それは武本も類に漏れないということだろう。
 武本は愛嬌がよく、話しやすく、誰にでも優しい。それ故にクラスメイトの中でも目立つし、社交的な性格をしているので、クラスメイトのほとんどと、大なり小なりの交友関係をきずいている。本当に感心するし、羨ましくなる。

 それに引き換え藤本は孤高の人って感じで、特定の誰かと仲良くしている姿を見たことない。他人を寄せ付けない雰囲気を持っているが、それは見た目がそうさせているだけで、ただ単に人見知りなだけだと思う。勝手な憶測に過ぎないのだけれど。

 武本は帰り支度をしている藤本の前に行き、ぼくのほうを向いて、藤本を遊びに誘っている。二度ほど首を振る藤本だったが、武本の粘りにより首を縦に振った。無理を言ったのだとしたら申し訳ない気持ちになる。

 ぼくたちは四人で集まり何をして遊ぶか話し合うことになる。誘ったぼくがノープランな事に武本は決まってないのって、びっくりしたが、機嫌を損ねるようなことはない。むしろ、色々な提案をしてくれていた。カラオケ。ボーリング。ゲームセンター。漫画喫茶。高校生が放課後に遊びに行くであろう場所を次々と言う。言いながら藤本の表情をうかがっていたようにも見えた。

 気配り上手な子だな。浜下、こんないい子中々いるもんじゃないぞ。

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