愛が欲しかった。


 クラスの中に気になる子がいる。そんな気持ちを持つことはないと思っていた。同級生は幼くみえる。それは今も変わっていないし、香りさんに対する思いは残っている。それなのにクラスに気になる子が出来ているぼくは不誠実なのこのだろうか。

 気になる子ができて目で追うようになって。
 この気持ちがなんとなく恋心だとそう思うこともある。

「最近、おまえ、藤本のこと目で追っているだろう」
 浜下と会話をしているといきなり射角ドンピシャなエイムでヘッドショットをかましてきたのだった。
「そんなことはない」
「別にかくす必要もないだろう。俺だって武本が好きってことを教えているだろ。ガキじゃないんだから好きな気持ちをかくすなよ」
「別に隠してるわけじゃない。それに好きだと断言できるほどじゃない」
 浜下は腕組みをして、考える素振りをみせて、
「なら藤本に彼氏ができた想像したらいいんじゃないか?俺なんて毎回、武本に彼氏ができる想像してブルーな気持ちになってるぞ」
 そんなことを考えてブルーな気持ちになるなら早く告白しろよ。でもまあ、藤本に彼氏か。想像してみる。そうだなイケメンで長身の優しい彼氏。
 ああ、敗北感に襲われた。
「そうだなイケメン完璧彼氏を想像したら、なんか幸せになってくれと思った」
「そうか、もっと近しい相手を想像したほうがいいぞ」
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