愛が欲しかった。
森本はぼくを見つけると、今まで重かった足取りが噓のように軽やかに駆け寄ってくる。苦難をともにする同士でも見つけたとでも思ったのかもしれないな。
森本に対して酷いいいようではあるが、決して嫌いというわけではない。ただパパ活や身売りをすることにたいして、同意ができるわけなく、だからと言って、やめさせるほどに親しいわけでもない。自分を安く売ってることに気づいてないのか、べつにそういう行為に対しての貞操観念がないのか、わからない。ただ、楽して得ているような気がしている。
それに、やはり、どうでもいい相手に平気で抱かれる女をぼくは好きにはなれない。例えそれが絶世の美女だとしてもだ。まあ絶世の美女などこの世にいるはずなく、ましてそういう行為におよぶ者を絶世の美女とは認めないのだけれど。潔癖故に。
「九条じゃん」
そう言って森本は声かけてきた。前のデパートのことなどなかったように接するあたりが、森本なのだろう。迷惑をかけた自覚がないのだから、怒るきにもならい。
「ああ。久しぶり。羽振りはどう?」
「最近、羽振りはいいよ。新しく見つけたパパがお金持ちでさあ。一回につき五万くれる」
一回につき五万円が高いのか安いのかよくわからなかった。