愛が欲しかった。
 放課後にぼくは藤本に一緒に帰ろうと提案していた。そう言われて藤本は迷いと戸惑いの表情をみせる。やっぱり、二人きりでの下校は厳しいかっとぼくは諦めかける。藤本の戸惑いは当たり前の反応だからだ。高校で男女が二人で下校する。この行動は少なからず誤解を産む。ぼく自身はそんな誤解を招いたとしても、無視できるメンタルを持っているから何とも思わない。けれど、藤本はそうでもないんだろう。そう思っていたのだけれど、それはぼくの見当違いだった。
「わたしと一緒に下校してもいいって思ってくれるのは、期待してもいいの?」
 藤本はぼくの思惑、武本の浜下に対する気持ちを訊こうとしているとはつゆにも思っていないようで、本来あるべき目的のほうで誤解をしてしまったようだった。これに関してはぼくの落ち度だ。誘った手前、今更ながらに違うと否定するのもどうかと思う。
 けれど、藤本に対して誠実さにかける。
「そうだね、ぼくは藤本に惹かれてる」
 ああ、全くもってぼくは藤本の期待に応える発言をしてしまった。藤本がぼくに少なからず好意を示してくれたから、でた言葉だった。
 それを訊いて藤本は顔を紅潮させながらも小さく頷いてくれたのだった。

ぼくは、彼女のその姿を見て、抱きしめたくなる思いにかられた。

ああ、可愛いくて、いとおしいと。
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