愛が欲しかった。
四月も半ばになると、クラスメイトの顔と名前がようやく一致してくるようになってきた。中には未だに名前を知らないクラスメイトもいるのだけれど、それは明確に棲み分けされた生徒たちで、とくに絡む予定がお互いにないからだろう。
見た目からして真面目でぼくの周りとは一線を引いているのがよくわかる。向こうからしてみればかかわりを持ちたくない部類にぼくは位置しているのだろう。ぼく自身はそんなこと毛ほどにも思っていないのだけれど、やっぱり浜下という巨漢の男は目立ちすぎるという事だろう。ぼくも知らない間柄でふとした瞬間に街で遭遇したならば、間違いなく目を合わさないと思う。話してみると気のいい奴ではあるのだけれど、どうしても食わず嫌いというやつは存在するものだ。
そんな浜下でもどうもクラスメイトの中に気になる女生徒がいるようだった。
親の話で雰囲気が悪くなって会話の糸口をどちらも見失っていたその時、その浜下の意中の生徒が教室に入ってきたのだった。
彼女の名前は武本いく。浜下とは対照的に身長が低い。見た感じ150センチはないだろう。童顔で可愛らしい顔をしていると思うが、どうにもぼくからしたら幼すぎるように見えている。同年代の女の子のはずなのに。