私達は結婚したのでもう手遅れです!
スーツを身に付ければ、どこからどうみても『社長』だ。
インターホンが鳴り、ドアを開ける。
入ってきたのは竜江(たつえ)だった。

「冬悟さん!おはようございますっ!」

朝から威勢がよすぎる。

「静かにしろ。羽花が眠ってる」

よりにもよって、今日の朝は竜江かよ。
仙崎(せんざき)は車で待っているのか。
ネクタイを締め、シャツのボタンをとめた。

「行くぞ」

「あれ?羽花さんは?」

「今日は休ませる」

「あー、もしかして!とうとうヤッちゃいました?」

だから、うるさいんだよ、お前は!
イラッとして竜江の横を通りすぎる瞬間、足をひっかけて体をすくいあげ、床に転がした。

「うわっ!」

すてんっと軽い音をたて転倒し、仰向けになる竜江を冷ややかに見下ろした。

「静かにしろと言っただろうが。とっとと外に出ろ」

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