私達は結婚したのでもう手遅れです!
「それで最後までヤッたんですか?」

竜江がにこにことした顔で『おめでとうございます』の言葉を準備している。
だが、俺の答えは残念ながら違う。

「最後までしなかった」

「ふへっ!?どこか具合でも悪いんですか!?」

「変な声出すんじゃねえよ。俺は至って健康だ」

「いやだって、ほら……えぇー!?」

黙ってハンドルを握っていた仙崎にも動揺が見られ、わずかだが車体が左右に揺れた。

「大事にしたい」

急ブレーキに竜江がゴツッと窓に頭をぶつけ、仙崎はすみません!と謝罪した。

「やっぱりどっか悪いんじゃ……」

正常だと何度言えばいいんだ?
めんどくせぇなと思いながら、窓の外見た。
マンション横の公園を通り過ぎる。
朝早いせいか、誰の姿もなかった。
羽花は今頃、目が覚めた頃だろうか。
スマホが鳴った。
相手は『柳屋』だ。
矢郷玄馬の次は父親か。
メガネをはずし、スマホ画面を見る。

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